🆕2026年1月9日公開『架空の犬と嘘をつく猫』レビュー:「良い人」の弱さと強さをバランスよく演じた高杉真宙

【あらすじ】
不完全で、やっかいで、でもどこか愛おしい――。
ある家族の30年にわたる嘘と愛の物語。
弟の死が受け入れられない母のため、弟のフリをして母に手紙を書き続ける、小学生の山吹。空想の世界に生きる母、愛人の元に逃げる父、夢を語ってばかりの適当な祖父と「噓」を扱い仕事をする祖母、そして「嘘と嘘つきが嫌い」な姉。
一つ屋根の下に住んでいながらもバラバラに生きている家族の中で山吹は今日も嘘をつきながら成長していく―。(HPより)

©2025 映画「架空の犬と嘘をつく猫」製作委員会

【作品概要】

高杉真宙・伊藤万理華・深川麻衣・安田 顕・余 貴美子・柄本 明 ほか

監督:森ガキ侑大

脚本:菅野友恵 

原作:寺地はるな『架空の犬と嘘をつく猫』(中央公論新社刊)

音楽:Cali Wang

製作幹事・配給:ポニーキャニオン 

制作プロダクション:ヒューマックスエンタテインメント ホリプロ

文化庁文化芸術振興費補助金(映画創造活動支援事業)独立行政法人日本芸術文化振興会

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©2025 映画「架空の犬と嘘をつく猫」製作委員会

『架空の犬と嘘をつく猫』は、「嘘」によってかろうじて形を守っている羽猫家という機能不全な家族の30年を、静かに刺さるタッチで描いた、極めて現実的で骨太な家族ドラマである。
ファンタジックなタイトルとは裏腹に、骨ばった痛みを伴うドラマだが、ラストにはかすかな温かさが残る作品でもある。

本作は、寺地はるなの同名小説を原作とし、『愛に乱暴』で世界の映画祭を沸かせた森ガキ侑大が監督を務めている。森ガキ監督の手腕は、世界15大映画祭の一つであるタリン・ブラックナイト映画祭のコンペティション部門に選出されたことからも、国際的に高く評価されている。脚本は、『浅田家!』で日本アカデミー賞脚本賞を受賞した菅野友恵が担当している。

この物語の核心にあるテーマは、「積み重なった嘘は、愛の裏返し」である。
羽猫家は、弟の死により現実を見なくなった母親を筆頭に、家族誰もが「不都合な真実」から目をそらし、それでもなお一緒に暮らしている機能不全の家族である。
「家族」という集合体を、愛情や安心を与えてくれる存在であると同時に、葛藤や緊張の源にもなる「やっかいで愛おしい」存在として描いている。

©2025 映画「架空の犬と嘘をつく猫」製作委員会

物語は、長男である主人公・羽猫山吹(高杉真宙)を中心に展開する。
小学生の山吹は、弟の死を受け入れられない母・雪乃(安藤裕子)のため、亡くなった弟になりすまして手紙を書き続けるという「優しい嘘」をつく。
彼は、家族のカタチを維持するために嘘を抱えた家族の中でただ一人、彼らの嘘や弱さと真正面から向き合いながら成長していく物語の軸となっている。
作品の「家族全員が嘘の中でしか生きていけない」世界観を牽引している。

物語は30年という長い時間を費やし、家族それぞれが選んだ嘘とその代償、そしてそれでも手放せない絆を静かに炙り出していく。
ドラマチックな出来事よりも、日々のささいな会話や沈黙の積み重ねで家族の関係性が描かれている。
演出は、沈黙や表情の「余白」で語られることが多く、観客に想像させるものが大きい、非常に静かな映画である。
過去と現在が錯交する構成の中で、家族の歴史が一枚の絵のように立ち上がってくる。

©2025 映画「架空の犬と嘘をつく猫」製作委員会

主演の高杉真宙は、幼少期の心の傷を抱えたまま大人になった山吹の繊細さと頑なさを、過剰な感情表現に頼らずに体現し、新しい代表作になりうる存在感を放っている。
優しいから脆い、脆いようでいて実は強い。そんな青年を高杉が好演している。

©2025 映画「架空の犬と嘘をつく猫」製作委員会

姉・紅役の伊藤万理華は、「嘘と嘘つきが嫌い」というキャラクターの鋭さと、その裏にある諦めや寂しさを行間でにじませ、山吹との対比を描いている。

安藤裕子、深川麻衣、安田顕、余貴美子、柄本明ら、幅広い世代の実力派俳優たちが集結しているが、彼らは悪目立ちすることなく世界観を底から支え、家族の「いびつさ」に納得を与えている。

総じて、本作は「家族映画」としてはかなりハードな題材を扱いながら、説教臭さや傷に流されることなく、観客自身の家族に引きつけて考えさせる余韻の深さが高く評価されている。
劇的な展開はないものの、切なさの中にこそ優しさがあることを示唆する作品だ。
その優しさの表現がたまたま嘘だったのだ。

©2025 映画「架空の犬と嘘をつく猫」製作委員会

そんな中、山吹が決して嘘を付かず、真摯に向き合った人がいる。
彼女と幸せになっていく過程こそ、山吹が長年付き続けた嘘で固められた人生で得た「真実の愛」だったのではないだろうか。

©2025 映画「架空の犬と嘘をつく猫」製作委員会

このシーンでの山吹の言葉に、彼のこれまでの来し方、そして人間として、とことん優しい本質が表れていた。泣いた。

2026年1月9日(金)より全国ロードショー


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