🆕12月26日公開!映画『サムシング・エクストラ! やさしい泥棒のゆかいな逃避行」レビュー:障がい者とのふれあいが生む奇跡

【あらすじ】

宝石店に泥棒に入ったパウロとその父親。警察の追跡から逃げるふたりは、ひょんなことから障がい者とその介助者になりすまし、障がいのある若者たちのサマーキャンプに身を隠すことに。

とりどりの個性を持つ彼らとの笑顔にあふれたドタバタでにぎやかな日々は、やがてふたりの心をやさしく解きほぐしていく。

しかし、そんなゆかいな逃避行も長くは続かず……やさしくあたたかな日々の果てに、宝石泥棒のパウロが見つけた“本当の宝物”とは――?

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この作品はフランスで圧倒的な大ヒットを記録した作品である。2024年フランス年間興行収入ランキングでNo.1を獲得。動員数は1080万人に達し、これはフランス国民7人に1人が鑑賞した計算である。公開初日動員数においては、『最強のふたり』を大きく上回り、フランス映画史上歴代2位の記録を打ち立てた。

【作品概要】

■監督:アルテュス
■出演:アルテュス、クロヴィス・コルニアック、アリス・ベライディ、マルク・リゾ、セリーヌ・グルサール、アルノー・トゥパンス、マリ・コラン、テオフィル・ルロワ、ルドヴィク・ブール、ソフィアン・リブ、スタニスラス・カルモン、マヤヌ=サラ・エル・バ
ズ、ボリス・ピトエフ、ギャッド・アベカシス、ティボー・コナン、バンジャマン・ヴァンドワル
■配給:東和ピクチャーズ

キャスティングと演出の真実味

サマーキャンプの入所者たちを演じているのは、実際に障がいのある11人のアマチュア俳優たちである。監督・脚本・主演を務めたアルテュスは、Instagramを通じて募集をかけてオーディションを実施し、彼らが選ばれた。

アルテュス監督は、彼らには職業俳優を望んでおらず、演じてもらうのではなく「本物であってほしかった」と述べている。

脚本はキャスティングが終わった後に、彼らの個性を最大限に生かす形で当て書きされたものである。

© 2024 CINE NOMINE – M6 FILMS – AUVERGNE-RHÔNE-ALPES CINEMA – SAME PLAYER – KABO FILMS – ECHO STUDIO – BNP PARIBAS PICTURES – IMPACT FILM

障がい者のふりをしているうちに…。

物語は、心やさしい泥棒のパウロ(アルテュス)とその父親(クロヴィス・コルニアック)が宝石店に盗みに入った後、警察の追跡から逃げるところから始まる。

障がいのある若者たちのサマーキャンプに身を隠すことになったふたり。

パウロは「シルヴァン」という新たな入所者に、父親は「オルピ」という(シルヴァンの)介助者になりすました。

この作品は、笑いのテンポと人間ドラマのバランスが非常に良く、終始ライトなトーンを持ったハートフル・コメディだ。

© 2024 CINE NOMINE – M6 FILMS – AUVERGNE-RHÔNE-ALPES CINEMA – SAME PLAYER – KABO FILMS – ECHO STUDIO – BNP PARIBAS PICTURES – IMPACT FILM

個性豊かな仲間たち(障がい者)との笑顔にあふれたドタバタでにぎやかな一夏のキャンプは、やがて泥棒の親子であるふたりの心をやさしく解きほぐしていく。

かみ合わない会話は絶妙の間でコントのようだ。次々と展開するそれらは、障がい者のふりをしているパウロを振り回す。

そしてパウロは、彼らの中にある純粋さに触れ、自分の心も洗われていく。

元々、心優しい青年だったのだろう。次第に優しさが溢れ出す演技が良い。

と、あらすじだけでこの泥棒親子が障がい者の彼らと触れ合う内に変化していくというだいたいの結末が分かっているのだが、それでも惹かれていくのは、「心のふれあいに、障がいの有無は関係ない」という、忘れてしまいがちな事実を面白おかしく提示してくれるからだ。

泥棒の親子が「誤乗車」によって特別な環境に身を置くという設定は、「正常」と「異常」の境界線を笑いながら消していく機能がある。

物語が始まってすぐに、施設の仲間たちはパウロと仲良くなる。そこに境界線はない。彼らにとって相手が障がい者であるか健常者であるかは関係ないのだ。

本来、健常者側もそういう気持ちでいるべきだと思う。

どこかで障がい者に行き過ぎた配慮をしていることを、笑いのベールに包んで示唆する。

© 2024 CINE NOMINE – M6 FILMS – AUVERGNE-RHÔNE-ALPES CINEMA – SAME PLAYER – KABO FILMS – ECHO STUDIO – BNP PARIBAS PICTURES – IMPACT FILM

境界線とはなにか

この映画は「正常と異常の境界線は、社会が引いた最も雑な線だ」というメッセージを伝えているわけだ。

監督は、知的障がいのある人々の持つ「素晴らしい想像力や、魔法のような魅力」を描きたいという意図を持っている。違いを笑い合えるのは健全なことであると確信している。

そしてその魔法がパウロの心を溶かし、自分が障がい者のふりをしていることを忘れ、つい本音を漏らすシーンは、泥棒親子となった背景が窺える。

このあたりからパウロには明確な変化が表れる。

そして父親も、一緒に泥棒をしてきた息子とは味わえなかった感情を見出していた。それは一人の青年とサッカーを通して芽生えた感情だった。

© 2024 CINE NOMINE – M6 FILMS – AUVERGNE-RHÔNE-ALPES CINEMA – SAME PLAYER – KABO FILMS – ECHO STUDIO – BNP PARIBAS PICTURES – IMPACT FILM

父も息子も、親子という間柄では表せなかった気持ちを障がい者の仲間に教えてもらったのではないだろうか。

また映像面において、夏の木漏れ日あふれるコテージや緑が彼らを清々しく映しだしている。

この作品は、説教臭さや過剰な感傷に頼らず、あくまで「楽しい映画」としての面白さを優先した、バランス感覚の良い一作であると言える。

さて、ラストは夏からクリスマスへと季節を移し、障がい者施設へ匿名のクリスマスプレゼントが届く。

この冬、心温まる最高のプレゼントをあなたも味わってください。

2025 年 12 月 26 日(金)全国ロードショー


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