🆕映画「Good Luck」~映画と旅が紡ぐ偶然の出会い

【あらすじ】

30歳間際の自称・映画監督の太郎。大分県で行われる映画祭に入選を果たし意気揚々と現地に向かうも、作品を厳しく批判されてしまい意気消沈。映画祭のパーティーをすっぽかしてフラフラと隣町の豊後大野へ向かうと、そこで太郎の映画を観ていた未希という不思議な女性と出会い、一泊二日だけの小さな旅をすることに。正体不明ではあるが、明け透けな性格の未希に映画づくりに自信を持てない自分をさらけだし、ほのかな恋心も抱き始める太郎だったが…ふたりがたどり着く、旅の結末は?(HPより)

【作品概要】

キャスト:佐野弘樹 天野はな 加藤紗希 篠田諒 剛力彩芽 板谷由夏

スタッフ:企画・プロデュース:釘宮道広 森田真帆 

プロデューサー:坂井正徳 足立晃子

協力:豊後大野市 別府市 

配給:ムービー・アクト・プロジェクト

© 2025「Good Luck」製作委員会(別府短編プロジェクト・TAMAKAN・theROOM)

◆映画公式サイトはこちら

冴えない監督の「すっぽかす」選択

主人公である映画監督の吉松太郎は、映画祭で入賞した作品を酷評され、自信も勇気もズタズタになっています。

酷評されている太郎(写真左は板谷由夏)© 2025「Good Luck」製作委員会(別府短編プロジェクト・TAMAKAN・theROOM)

彼は、受賞者の集まるパーティーに出席せず、「すっぽかす」という選択をします。この「すっぽかす」という行動こそが、この摩訶不思議なロードムービーの始まりです。

太郎がきちんと理由を説明して欠席していたならば、彼の持つ「弱さ」が表現されません。本来、欠席するにしても連絡を入れるのが社会人ですが、それができていたら「吉松太郎監督」が主人公の本作は成り立たないことが、観ているうちに分かってきます。

太郎は「断る強さ」もなく、「いい加減さ」とも受け取れる行動をとりますが、本人にとってはそれが意思表示だったのでしょう。

太郎を演じる佐野弘樹は、「情けなさ」と「善良さ」が同居した力の抜けた佇まいで、やるせない旅の道行に説得力を与えています。

天然パーマをいじられても飄々とし、どこか嬉しそうな彼の「抜け感」が、逆に愛おしく感じられます。

共通点は「悪気はない」

太郎の前に現れる未希(天野はな)は、太郎の映画を観ていたという不思議な女性です。彼女はしたたかで奔放に見えますが、儚さや脆さを隠し持っており、その魅力は太郎にパートナーの存在を忘れさせてしまうほどです。

© 2025「Good Luck」製作委員会(別府短編プロジェクト・TAMAKAN・theROOM)

頼りない太郎に対し、未希は積極的で、相手を自分のペースに巻き込むのが上手いという特徴があります。

この二人の共通点は「悪気はない」ことです。

太郎がパーティーを欠席したことも、未希の突飛な行動も、その時の気持ちに正直になっただけのことであり、子どもの「悪気はなかったんだよ」という言い訳と同義だと思えてきます。観る者に許容を与える不思議な作品でもあります。

映像でしか伝わらないユーモア

未希が登場することで、この作品のユーモアは加速していきます。

例えば、クリーニング屋で未希が店の前の自転車を借りようとする場面。

店主は「いいですよ。クリーニング屋ですけどね」と繰り返します。

このミスマッチが可笑しさを生み出します。

© 2025「Good Luck」製作委員会(別府短編プロジェクト・TAMAKAN・theROOM)

人の話を聞かない未希の天真爛漫さ、どこでも「わ~!!」と感嘆の声を上げる子どものような姿は、天野はなの屈託ない演技によって魅力的に映ります。

この作品には、文字にすると可笑しさが伝わらない部分が多々あり、それこそが原作がないから伝わる足立監督の「映像」による表現世界なのだと理解しました。

ロケーションが担う装置の役割

物語の舞台である豊後大野の風景や、鍾乳洞サウナ、川サウナといったロケーションは、単なる観光名所の紹介ではありません。

これらは、二人の距離感を徐々に把握するための「装置」として機能しています。

出会ったばかりの二人が水着姿で話すからこそ、低温サウナのように、じんわりと二人の心の距離が近づいていったのではないでしょうか。

© 2025「Good Luck」製作委員会(別府短編プロジェクト・TAMAKAN・theROOM)

この映画は、観る人の好みが分かれるかもしれませんが、嫌う人はいないのではないかと思います。

なぜなら、太郎と未希の行動は全て「子どものすることだから」。

子どもは予想がつかないことをし、大人のような警戒心がないからこそ、どんなアクの強い人でも受け入れてしまうのです。

物事を深く考えて行き詰っている時に観てほしい一作です。

二人の奇妙な旅は、今日を生きるための小さな強さをそっと差し出してくれるでしょう。

肩の力を抜いて観られるのに、どこかで「自分もそうかも!」と思える点が主人公たちの性格に散りばめられている、そんな作品です。

2025年12月13日(土)よりシアター・イメージフォーラムほか全国順次公開


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