
©2025「消滅世界」製作委員会
【あらすじ】
母から「あなたはお父さんとお母さんが愛し合って生まれた子」と言われながら育った雨音。しかし人工授精の技術が発達し、夫婦が性行為をすることはタブーとされている今、雨音は交尾をして自分を産んだ母に嫌悪感を抱いている。人が恋や性の対象として見るべきなのは、家の外の恋人や二次元キャラクターだと言われているし、雨音の初恋もテレビアニメの主人公の少年・ラピスだ。雨音がラピスに恋をしていると実感するとき、自分は母とは違うのだ、周囲と同じく正常だとわかって喜びを感じた。雨音は、同じようにラピスに恋をしている同級生の水内といろいろな話をした。ラピスを思いながら、雨音と水内は初めてお互いの身体をつなげた。
大人になり結婚をした雨音だったが、夫に襲われそうになり離婚をする。夫から性欲を向けられショックを受ける雨音だったが、病院で医師になった水内と再会。男性の妊娠を研究している水内の話を聞くうちに落ち着きを取り戻していった雨音は、高校からの親友である樹里の勧めで、出会い系アプリに登録をする。そこで出会った朔は、雨音の元夫の行為に吐き気を催し、雨音に心からの同情を寄せた。
かつて雨音や樹里たちが暮らしていた千葉は今、実験都市となっている。選ばれた住民たちが一斉に人工授精を行い、生まれた子どもは住民全員の子として愛されながら育つその都市は、“エデン”と呼ばれている。家の外に恋人を作ったもののうまく恋愛ができなかった雨音と朔の夫妻は、エデンへの移住を決める。水内の協力を得て、エデンには明かさないままふたりの子どもを授かろうとする雨音と朔。二人にとっての楽園(エデン)はユートピアか、それともディストピアか・・・・(HPより)
©2025「消滅世界」製作委員会
【作品概要】
原作:村田沙耶香『消滅世界』(河出文庫)

蒔田彩珠 栁俊太郎
恒松祐里 結木滉星 富田健太郎 清水尚弥
松浦りょう 岩田奏 落井実結子 /山中崇/眞島秀和/霧島れいか
音楽:D.A.N. 主題歌:D.A.N.「Perfect Blue」
劇中アニメキャラクターデザイン:Waboku
監督・脚本:川村誠
製作:2025「消滅世界」製作委員会
宣伝:共同ピーアール 制作プロダクション:さざなみ
配給:NAKACHIKA PICTURES ©2025「消滅世界」製作委員会
◆映画公式サイトはこちら
空想か近未来か
本作品は、『コンビニ人間』で第155回芥川龍之介賞を受賞した村田紗耶香、初の実写映画である。

主人公「雨音」役:蒔田彩珠 ©2025「消滅世界」製作委員会
愛し合った男女が性行為によって生まれるのが子どもであるという概念を覆す斬新な設定に視聴者はまず驚くだろう。
少数派であった人工授精を多数派に置き換えたこの作品は、視聴者を空想世界か近未来に迷い込ませるが、不思議と共感してしまう。
なぜなら、主人公たちと彼らを取り巻く人たちは皆等しく「家族」を求めている点で現実社会との共通点があるからだ。
「絶対的な信頼」を寄せられる相手、「味方」になってくれる相手を欲し、それは家族であるという概念は現実社会と一致していると言えるだろう。
だからこの作品は「ありえるかもしれない」と視聴者を引き込むのだ。
普通が異常か
現実社会では「両親が愛し合って生まれた子」は祝福されるが作中では異端児とされる。
人工授精の子どもであれば「普通」であり、そうでなければ「異常」とされるからだ。主人公の雨音は幼少期にそのことでイジメられるが、問題はその事実を誰が言ったかである。
秘密にしておきたいことを噂にする人がいる。
空想の世界も現実世界も一緒なのだ。

雨音の夫となる朔(さく)を演じるのは栁俊太郎©2025「消滅世界」製作委員会
母親への反抗
もう一つ、特筆すべき点は主人公と母親との関係性だ。
自分を「人工授精で産まなかった」母親を蔑視している。
そして自分は母親のようにはならないと心に決めている主人公。
母と娘の関係というのは一歩間違えれば「敵対」する危ういものである。
それもまた現実社会と一致している。
本作品はまるで空想のような世界を近未来的、SF世界のように描いているが実は、述べてきたような、普遍的かつ本質的な問題を描いているのである。
主人公たちの着ている服や暮らしている空間に鮮やかな色がない
主人公たちの着ている服は色、形がとてもシンプルだ。
飽きの来ないデザインとも言えるが、誰からも非難されない無難なスタイルとも言える。

©2025「消滅世界」製作委員会
彼らが暮らしている空間もそうだ。
とてもスタイリッシュだが生活感のない空間が、作品の世界観を象徴的に浮かび上がらせ、視聴者の共感を引き出しているのではないだろうか。。
「消滅世界」は「突拍子もない未来」を描くことで、現実で消滅しきれない「親子関係」や「他者を排斥する人間心理」をより深く問いかける作品となっている。
私たちの日常に突如提示された「異世界」をリアルに体験してほしい。

©2025「消滅世界」製作委員会
11月28日より絶賛上映中!