中野量太監督最新作『兄を持ち運べるサイズに』先行公開記念イベントレポート:オダギリジョー、原作者・村井理子、監督が大阪に集結!
中野量太監督が脚本・監督を務めた最新作、映画『兄を持ち運べるサイズに』が、2025年11月28日(金)より全国公開されます。
この注目作は、作家・村井理子氏が実際に体験した数日間をまとめたノンフィクションエッセイ「兄の終い」(CEメディアハウス刊)を基に映画化されたものです。
絶縁状態にあった実の兄の突然の訃報から始まる、家族のてんてこまいな4日間を描いた本作 の全国公開に先立ち、11月21日(金)よりTOHOシネマズ梅田およびTOHOシネマズ日比谷での先行上映がスタートしました。
この先行上映を記念し、11月23日(日)にはTOHOシネマズ梅田にて、主演のオダギリジョー氏、原作者の村井理子氏、そして中野量太監督が登壇する舞台挨拶が開催されました。
本レポートでは、実力派キャストが紡ぎ出す感動の物語の制作秘話と、舞台挨拶の熱気を詳しくお伝えします。

©2025 「兄を持ち運べるサイズに」製作委員会
席巻する名匠と豪華実力派キャスト陣
中野量太監督は、宮沢りえ主演の『湯を沸かすほどの熱い愛』で日本アカデミー賞や報知映画賞など数多くの映画賞を席捲し、二宮和也主演の『浅田家!』では国内のみならずフランスでも大ヒットを記録した、日本映画界が誇る名匠です。本作は、そんな中野監督にとって5年ぶりの新作となります。
主演を務めるのは、マイペースで自分勝手な兄に幼いころから振り回されてきた主人公・理子役の柴咲コウ氏。そして、家族を振り回す原因となる、映画史上稀にみるダメな兄ちゃんを演じるのが、今回の舞台挨拶に登壇したオダギリジョー氏です。
共演には、兄と離婚した元嫁・加奈子役を満島ひかり氏、兄と加奈子の娘・満里奈役を青山姫乃氏、最後まで兄と暮らした息子・良一役を味元耀大氏が名を連ねています。この実力派キャストが揃い、泣き笑い、時々怒った兄を送るためのてんてこまいな4日間を紡ぎ出します。
賑わいの大阪舞台挨拶:口コミを広げて!
「ようこそ大阪へ!」という呼び込みで迎え入れられたオダギリジョー氏、村井理子氏、中野量太監督の三人。
舞台に上がったオダギリ氏は、全国公開1週間前からの先行上映という初の機会に参加しているとし、「皆さまも(28日の全国公開を前に)口コミを広める意識で帰ってください(笑)」と観客に呼びかけ、会場の笑いを誘いました。
原作者の村井氏は「初めての機会で緊張しています」とやや緊張気味に挨拶。京都出身の中野監督は、地元の仲間も観に来てくれているだろうと語りつつ、村井氏と最初に会ってから3~4年が経ち、準備を進めてきた本作が「やっと一本の映画になって皆さまにお届けできたことが嬉しいです」と、上映の喜びを噛みしめました。

村井理子氏 ©2025 「兄を持ち運べるサイズに」製作委員会
映画化のきっかけと監督・キャストの絆
中野監督が本作の映画化を決めたのは、あるプロデューサーから誘いを受けて原作「兄の終い」を読んだことがきっかけでした。兄が亡くなる話であるにもかかわらず、読んでいてクスっと笑えたり、熱い思いになったり、「これまで僕がつくってきた映画と方向性が似ている」と感じ、「これなら僕がつくったら面白くできるんじゃないかと思った」と振り返ります。
一方、映画化の話を聞いた村井氏は、映像化は書き手にとってとても嬉しいことだとしつつも、「本当は何が起こっているのかあまりわかっていませんでした(笑)」と当時の率直な心境を述べました。
オダギリジョー氏は、脚本を読んですぐに監督にメッセージを送ったほど即決だったことを明かしました。
オダギリ氏にとって中野監督作品への出演は『湯を沸かすほどの熱い愛』以来10年ぶり。中野監督とは歳が近く「わかり合えている何かがある気はしています」とし、「監督が書く脚本はいつも”笑って泣ける“面白い脚本が多いので、参加するのがとても楽しみでした」と監督への強い信頼を語りました。

©2025 「兄を持ち運べるサイズに」製作委員会
悲劇を救いに変えた映像化の力
本編を鑑賞した村井氏は、最初はもちろん感動したとしながらも、原作だけでは「兄の死は悲劇的なかたちで終わってしまう」が、映像になることで「いろんな仕掛けがあって、悲しいだけではなく、楽しい話にもなっていて、私にとってはそれが救いだったなと思います」と、映画化によって得られたポジティブな変化について語りました。
オダギリジョーが語る、独自の役作りへのこだわり
実在の人物である<兄>を演じたオダギリ氏の役作りは、非常に独特でした。監督から村井氏へのオンライン取材の機会を勧められた際、オダギリ氏はこれを「断った」と明かしています。
その理由についてオダギリ氏は、「何となく、知るのが怖いというか、今から演じる人のことを、答えを先に見せてもらいたくないと言いますか、(自分で)探していきたいと思ったんです」と打ち明けました。
さらに、「原作もあえて読まなかったですし、監督が書かれた脚本だけを信じて、監督との作業だと思って演じました」と、中野監督の脚本と作業に集中して役に挑んだ心境を語りました。
中野監督は、オダギリ氏のそのスタイルを理解しており、「参加しないならしないで良いかなと思っていました(笑)」と笑いを誘いつつも、自身が村井氏にたくさん話を聞いて脚本に反映させたことを強調しました。
その結果、オダギリ氏が演じた兄を観て、村井氏が「本当の兄みたい」と言ってくれたことが嬉しかったと振り返りました。
村井氏も、見た目は実の兄とは違うとしつつ(笑)、お葬式のシーンでお金を無心する場面、スーパーで焼きそばを買う場面、アパートで履歴書を書いているシーンなどは、「本当にびっくりするぐらい兄と雰囲気が似ていて、すごいなと思いました」と、オダギリ氏の演技に兄の面影を感じたことを明かしました。
オダギリ氏は、その感想を初めて聞いたとし、「それは偶然です!」と冗談交じりに返しつつも、「でも、嬉しいです」と喜びをにじませました。

©2025 「兄を持ち運べるサイズに」製作委員会
創作の秘密:「焼きそばエピソード」と「頭の中の兄」
中野監督によると、本作は「6割は原作から、2割は村井さんへの監督取材、そして後の2割が監督のオリジナル要素」でつくられています。監督は、文字と映像は別物であり、原作の大切な部分はぶらさずに、面白く見せるためにオリジナルの要素を加えたと説明しました。特に、村井氏への取材の中で明らかになった「お兄さんと焼きそばのエピソード」など、原作にない話も取り入れられたといいます。

持っているのが焼きそばです。 ©2025 「兄を持ち運べるサイズに」製作委員会
また、演出面での重要なアイデアとして、妹・理子の心の中の声がテロップで表現される手法が採用されました。さらに、原作では回想シーンでしか登場しない兄を、劇中では「理子の頭の中だけに現れる存在」として描くことで、脚本作業が飛躍的に進んだという秘話も明かされました。
この兄の描写について、オダギリ氏は「理子の回想と、理子のイメージの中でしか<兄>は出てこないので、演じるにあたって幅がありすぎて、逆に怖かったです」と、役の難しさを語りました。
監督と原作者が追い求める「家族とは何か?」
中野監督と村井氏には、一貫して「家族」をテーマに作品を生み出してきた共通点があります。
中野監督は、「『兄の終い』を読んだ時に、残された人々が右往左往しながらも頑張って生きている姿に感銘を受けた」とし、自身の作品も「“家族の死”を描いてはいますが、残された人々が死を受けてどう生きるか、ということを描いてきている」ため、その一生懸命生きる姿が滑稽でおかしいという方向性が村井氏と似ている部分だと分析しました。
村井氏も、家族を描く理由について「家族というものがよくわかっていないから」だと述べ、「『家族とは何か?』をずっと探っていて、そこが監督との共通点かもしれません」と共感を寄せました。
試写会で「家族について考えさせられた」という声が多く寄せられている本作。心境の変化を尋ねられた村井氏は、映画の中で両親と兄と理子の四人がスーパーに大集合するシーンを観た際、「本来は無理なんですが映像の中で集まれたことで安心を感じました」と、胸の内を語り、そのシーンが亡くなった両親を思う時の救いになっていると述べました。
中野監督も、家族の物語を撮る動機は村井氏と同じく「『家族とは何か』という答えがわからないから」だとしつつも、村井家や『浅田家!』にとっての家族の形の答えは毎回あるが、「それって毎回違うんですよね。だからこそ、毎回新鮮です」と、創造を通じて家族の形を探求し続けていることを示唆しました。
締めくくりと観客へのメッセージ
舞台挨拶の最後に、オダギリ氏は「この作品を皆さまの愛情をもって、ぜひいろんな人に届けてください」と観客に呼びかけました。
中野監督は、「映画って長い旅で、やっとここから皆さんに観てもらうために出航する感じです。皆さんはそれの最初のお客様です」と観客に感謝を伝え、「皆さんはで勢いよく広めていただけると幸せですし、5年振りに撮ったこの映画は自信作です。観て思ったことをお伝えいただけると嬉しいです」と締めくくり、イベントは盛況のうちに幕を閉じました。

©2025 「兄を持ち運べるサイズに」製作委員会
家族の訃報という重いテーマを扱いながらも、笑いと涙、そして「家族とは何か」を問い直す温かい視点を持つ『兄を持ち運べるサイズに』は、きっと多くの観客の心に響くでしょう。
11月28日(金)よりTOHOシネマズ日比谷他、全国ロードショー