【ストーリー】
1965年、オリンピック景気に沸く東京で、街の浄化を目指す警察は、街に立つセックスワーカーたちを厳しく取り締まっていた。
ただし、ブルーボーイと呼ばれる性別適合手術(*当時の呼称は性転換手術)を受け、身体の特徴を女性的に変えた者たちの存在が警察の頭を悩ませていた。
戸籍は男性のまま、女性として売春をする彼女たちは、現行の売春防止法では摘発対象にはならない。
そこで彼らが目をつけたのが性別適合手術だった。
警察は、生殖を不能にする手術は「優生保護法」(*現在は母体保護法に改正)に違反するとして、ブルーボーイたちに手術を行っていた医師の赤城(山中 崇)を逮捕し、裁判にかける。
同じ頃、東京の喫茶店で働くサチ(中川未悠)は、恋人の若村(前原 滉)からプロポーズを受け、幸せを噛み締めていた。
そんなある日、弁護士の狩野(錦戸 亮)がサチのもとを訪れる。
実はサチは、赤城のもとで性別適合手術を行った者のひとり。
赤城の弁護を引き受けた狩野は、証人としてサチに出廷してほしいと依頼する。
【作品概要】
監督:飯塚花笑
キャスト:中川未悠 前原 滉 中村 中 イズミ・セクシー 真田怜臣 六川裕史 泰平 渋川清彦 井上 肇 安藤 聖 岩谷健司 梅沢昌代 / 山中 崇 安井順平 / 錦戸 亮
脚本:三浦毎生 加藤結子 飯塚花笑 音楽:池永正二
製作:アミューズクリエイティブスタジオ KDDI 日活
制作プロダクション:オフィス・シロウズ
配給・宣伝:日活/KDDI
©2025 『ブルーボーイ事件』 製作委員会
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©2025 『ブルーボーイ事件』 製作委員会
【手術なのか治療なのか】
舞台は1960年代。
錦戸亮演じる弁護士の狩野はある日、先輩弁護士からある案件を頼まれる。
被告は、男性に対して性別適合手術(*当時の呼称は性転換手術)を行っていた医師の赤城。
狩野は法廷に、赤城が性別適合手術を施した「アー子」(演じるのはイズミ・セクシー)を証人として呼ぶ。
もうすぐ自分の店を開く予定のアー子は、仲間や後輩のために「あの子たちが何も隠さず素直に生きられたら素敵だと思わない?」と言って証言台に立つことを決意する。

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法廷で狩野は、赤城のやったことは性別の認識と実際の体が違う苦しみから患者を救うための治療だったという内容を主張する。しかしアー子は「自分は病気ではない」と感情を露わにした。
【関わりたくありません。女として生きています】
アー子が出廷できなくなったことで、この物語の主人公であるサチ(中川未悠)の気持ちに変化が起こる。
最初は「関わりたくありません、女として生きています」と断っていたが、
「ずっとこのままではいけない」という気持ちが沸き起こったのだ。
それはアー子と同じように、のちのブルーボーイに対して自分もできることがあるという決意だったのだろう。
そしてこの頃、狩野の中でも変化が起きていた。

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最初は先輩に頼まれた案件であったが、ブルーボーイと呼ばれる人たちと出会い、アー子の思いに触れ、狩野は本当の弁護士として立ち上がったのだ。
「あなたたちのことを教えてもらえないでしょうか」とサチに証人を頼む狩野は実に人間臭い。
そしてこのセリフがこの作品の持つテーマの一つであるだろう。
そうだ、「知ること」が大切なのだと、錦戸の熱い演技が呼びかける。
サチは、証人になることを決意する。
【自分の居場所を求め続けたサチ】
中盤になり、明らかになるサチの過去。
「田舎では、『女男』は生きて行けません」と自らの経歴を語る。
中川未悠の抑えた演技に、それまでのサチの苦労が見て取れる。演技初体験とは思えないほど、錦戸と堂々と渡り合っていた。
法廷で検察側はサチに対して非常に厳しいことを言う。

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それは聴いていて苦しくなるほどだ。明らかに主観が入っていると思われる検事役を安井順平が好演している。
「生理がなければ形だけ繕っても女ではない」とまで言い、サチを追い詰めていく安井の迫力に、錦戸も必死で対抗してサチを庇う。
生の舞台を見ているような迫力あるシーンだ。
サチはそれでも凛としていた。
【これが私なの】
同棲中の恋人・若村(前原滉)へ迷惑がかかるのを恐れるサチ。
証言台に立つことをやめないサチを尊重するまでの若村の葛藤はとても理解できた。そしてそんな若村を見てサチが下した決断は潔い。
サチが証言台で話す一言一言が、胸に刺さる。
そして途中からは、これは単に性的マイノリティの主張ではなく、誰しもが抱える「自分らしく生きることの難しさ」であることに気づく。サチは証言を通じて自分の気持ちを繕うことなく吐露することで「これが私」という存在証明をしていったのだろう。
錦戸が演じる狩野弁護士は、サチたちと出会ったことで確実に変わって行った。

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サチの証言に時に涙し、弁護士として、そして一人の人間として裁判官に「幸せになる権利」を訴える。
この物語に「正解」はない。ただ、実話であったことを理解し、その上で性的マイノリティの人たちが歩んできた道を知ることに意味がある。
まだ「多様性」という言葉がなかった時代、差別的な言葉で見下されていたサチたち。
性的マイノリティに対して、「知ること」はこの世界でマジョリティとして生きる者の務めではないだろうか。
彼らは決して認めてくれとは言っていない。ただ「知ってほしい」。
2時間の映画を見終わった時、そのメッセージは筆者の心に確実に届いていた。

©2025 『ブルーボーイ事件』 製作委員会
11 月 14 日(金) 全国公開