🆕11月14日公開!ドキュメンタリー映画「はだしのゲンはまだ怒っている」レビュー:ゲン自身がドキュメンタリーの主人公

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©BS12 トゥエルビ

【概要】

漫画『はだしのゲン』は、広島で被爆し家族を失った少年ゲンが、貧困や偏見に苦しみながらも力強く生きる姿を描いた作品で、作者・中沢啓治の実体験がもとになっています。1973年の連載開始以来、25か国で翻訳され、2024年にはアメリカの「アイズナー賞」殿堂入りを果たしました。

一方で、過激な描写や歴史認識をめぐる議論から、学校での閲覧制限なども起きています。

このたび映画化された『「はだしのゲン」の熱伝導〜原爆漫画を伝える人々〜』は、BS12の受賞ドキュメンタリーをもとに、込山正徳監督と大島新・前田亜紀の制作チームによって制作されました。

戦後80年を迎える今も、ウクライナや中東の戦火、核の脅威が続く中で、作品が描く“怒り・悲しみ・優しさ”を通して、現代に問いかける内容となっています。(プレスリリースを要約)

漫画「はだしのゲン」はドキュメンタリー作品のようだ

ドキュメンタリー作品の多くは、視聴者に多くの問いを投げかけてくる。

そういった意味で漫画「はだしのゲン」はドキュメンタリーだといえる作品だ。

今では入手困難なこの漫画を、筆者は子どもにせがまれて古本屋で入手した。

当時9歳だった我が子に、この漫画は「恐怖」を抱かせてしまうのではないかと心配した。

被爆の実態を明らかにした描写は時にグロテスクでもあり、目を覆いたくなる場面が続く。

そしてゲンの放つ言葉の鋭さに、こちらが悪くはないのになぜだか責められた気になってしまう。

それは本作品「はだしのゲンはまだ怒っている」を見ることによって解決していった。

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ゲンを伝える人々

この作品は様々な人達が漫画「はだしのゲン」を紹介していくことで、その内容に深く分け入っていく。

まずは作者である中沢啓治さんの奥様である中沢ミサヨさんだ。

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彼女は原爆に関する短編を描いていた中沢さんに連載小説の話がやって来た時の様子を語る。

「面白くなければ読まれない」と語った中沢さんの思惑通り、この漫画は堅苦しくない。

たしかにセンシティブな内容をストレートに描いているので息を飲むことはあったが、何度も読んでいるうちに、この漫画は少年なら誰もが持っている激しい感情を表している共感型の漫画なのだということが分かる。

筆者と同じ思いであったろうか、今度は「はだしのゲン」の語り部も現れる。

講談師の神田香織さんだ。

読むのではなく「聴く」ゲンの物語は、セリフに力がこもり、ゲンや周囲の登場人物が目に浮かぶようで臨場感がある。

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神田さんは40年以上、この講談を続けている。

賞賛だけではない意見にも耳を傾ける公平さ

一方でこのドキュメンタリーは、「はだしのゲン」の賞賛に終始しない。

本作はその描写が過激であるという意見や、戦争に対する認識の違いなどから、近年教材として姿を消すようになった。

そうした事情を説明する立場の人にも話を聞く。

作品が持つ公平さを担保するための試みといえるだろう。

もうひとつ注目したいのは、被爆当事者たちの証言だ。

登場してくれた人たちの年齢を考えて非常に丁寧かつ慎重に話に傾聴しているのが素晴らしい。

「はだしのゲン」に登場するある女性のように、火傷で苦しんだ過去を持つ女性、阿部静子さんの証言は特に胸を打った。

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ぜひ劇場でその言葉を聞いてほしい。

大切なことはただ一つ

ナレーションを務めた監督は最後に言う。

「次世代に伝えていくことの大切さ。そこから希望が生まれると信じている」と。

そのために本作品は重要な役割を果たしたと思う。

筆者がこの漫画を読んだ際に抱いた「責められたような感覚」も、この作品を伝えていくことで解消されるだろう。

漫画「はだしのゲン」を教材として子どもに強いるのではなく、読みたい人が読みたいときに読める環境になればいい。筆者はそう思った。

この作品は、小学生以上のお子さんにも見てほしい。

戦後80年の夏は過ぎたが、ゲンはまだ怒り続けるだろうから。

若き日の作者、中沢啓次さん ©BS12 トゥエルビ

11/14(金)より広島・サロンシネマ、11/15(土)より東京・ポレポレ東中野ほか全国順次公開


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